
オーストリア西端に近いドルンビルンにある8階建て事務所(この建物の構法を開発したコンサルティング会社CREE社)の木造ビルです。建設時、使用時、解体時のライフサイクルエネルギーを意識してライフサイクルタワーと命名されています。
階段室とエレベータダクトはRC造で、その他は壁パネル(集成材柱を含む)と床パネル(集成材梁+RCの複合)を用いたプレハブ構法で建っています。
以前は工事中の動画もネットに公開されていましたが、先行して階段室とエレベータダクトができた後に1層1日の工程で建ち上がっています。5階までできた時に勾配屋根を架けていますが、週末休工中の一時的な雨対策とのことでした。日本であれば、続けて建て上げてしまうところでしょうか。
延べ面積約1,600㎡、2012年竣工。
(写真撮影日:2013.10.10)
オーストリア・スイス・ドイツの3国国境のボーデン湖の東端から南約10kmのドルンビルン、そのドルンビルン駅の北600m程に建っています。
<google地図参照>
事務室内部
天井パネル(上階床パネル集成材梁の間)の上を設備配管スペースとしています。
照明はスイッチ配線を省き、リモコンスイッチを壁に固定してありました。
集成材の柱・梁は現しです。欧州規定の耐火試験も行われているようです。
奥行き約20m、幅約7.5m。

構造模型
<床パネル>
240㎜×270㎜集成材梁4本(中央は2本抱合わせ)に、厚さ80㎜のコンクリートを打ち足した350㎜厚の複合パネルで、幅約2.5m×長さ約7.5m。
梁上端には30㎜程の掘込みがあり、その部分のコンクリートは厚さが増しています。短辺にはRC梁が構成されています。
<壁パネル>
240㎜角集成材2本抱合わせ柱が約2.5m間隔で並び、サッシも組込まれたカーテンウォールと一体化されたパネルで、階高分3.3m×長さ約8m以下。


同構法で、20階建ても建築可能とのことで、設計図面や構造解析したことを説明する掲示もありました。
スウェーデンでは、34階建て木造高層マンションの提案(一部RC造の他、下層階では鉄骨を木材で被覆した構造材も使用)もあります(2023年に実現の計画)。
日本国内でも、木造ではありませんが、鉄骨を木材耐火被覆した構造材を用いる10階建て建築が、国土交通省の補助金事業に採択されていますので、数年内に木造風味のビルが竣工するかも知れません(既に同様の4階建てビルは建っています)。

(2018.04.02)1974年卒 飯山道久